最近SNSでも多くの方が載せている「飲む日焼け止め」。2020年8月30日放送の日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』で初めて存在を知ったという方も多いようですね。
飲む日焼け止めは錠剤(サプリメント)やドリンクタイプがあり、日焼け止めクリームを塗るのが面倒くさい人にとってはもってこいの商品で、飲むだけで日焼け止め効果が得られるのならこんなに嬉しく楽な商品はありませんよね。
ただ残念ながら、日焼け止めとしての効果は科学的にほとんどありません。むしろチョコレートを食べていたほうが日焼け防止効果があるくらいです。
また、飲む日焼け止めは景品表示法・薬機法(旧薬事法)違反であり、FDAやAADからも警告を受けていたりと、本来日焼け止めと謳ってはいけないものでもあります。
そんな商品を買って大丈夫でしょうか…詳しく見ていきましょう。
もくじ
飲む日焼け止めとは?
飲む日焼け止めは「フェーンブロック(ファーンブロック)」や、「ニュートロックスサン」という成分などが配合された錠剤やドリンクで、飲むだけで日焼けを防ぐと謳われている、健康食品です。
販売当初は1〜2種類しか製品はありませんでしたが、2002年にスペインで生まれた「ヘリオケ○」という商品がヒットして、世界各国で販売されるようになりました。
各製品大体1ヶ月分で2000〜5000円ほどと価格差はありますが、手軽に手に入り、最近はSNSでも多くの方が紹介するようになりましたね。
従来の塗るタイプの日焼け止めは肌表面にバリアを張って紫外線を防ぎますが、飲む日焼け止めは肌そのものに紫外線をうけるダメージを抑え、身体の中から日焼け止め効果を発揮します。
フェーンブロック(ファーンブロック)とは?
PLエキス(シダ科の植物から抽出された成分)を含み、飲む日焼け止めに配合された特許成分です。
抗酸化作用があり、紫外線を浴びると皮膚が炎症(肌が赤くなったり)をおこし、活性酸素が発生しますが、フェーンブロックにはこの活性酸素を抑える働きがあり、炎症を防ぎます。そのほか、免疫防御・DNA保護・皮膚の維持効果もあります。
フェーンブロックは早く効くが効果は短いという特徴があり、飲んでから30分後に効果が出ると言われますが、4時間ほどしか持続はしないと言われています。
ニュートロックスサンとは?
ニュートロックスサンはシトラスとローズマリーから抽出したエキスが成分で、国産の飲む日焼け止めのほとんどはニュートロックスサンが配合されたものです。
ニュートロックスサンには取り決めがあり、1日の摂取目安で250mg以上でないと商品にニュートロックスサン配合と謳ってはいけません。250mg以下だとシトラスエキス、ローズマリーエキス配合などと書かれています。
フェーンブロックと同じく抗酸化作用はありますが、その他の効果・作用はありません。
ニュートロックスサン配合の飲む日焼け止めが体内で働き始めるのは、「摂取開始から8週間経ってから」という研究結果が出ています。つまり、飲み始めて2ヶ月以上経ってから効果が出始めるということですね。
他の成分が配合されているものもある
最近は上記成分のほか「パイナップル果実抽出物」「クコの実エキス」「パフィアエキス」などを主成分にしている飲む日焼け止めもありますが、これらは十分な情報がなく、効果も安全性も定かではありません。
飲む日焼け止めの効果は?
飲む日焼け止めは紫外線の影響を抑制する効果及び日焼けによる炎症や痒みを抑える効果が科学的に認められています。
ただし、実質計算するとSPFはわずか2程度。市販に出回っている塗るタイプの日焼け止めのSPFは15〜50の範囲です。
飲む日焼け止めの中の抗酸化物質の量を日光による紫外線ダメージを確実にブロックできるレベルまで増やすと、おそらく望ましくない副作用が生じると言われています。
参考:Protection: The sunscreen pill
詳しく紐解いていくと、フェーンブロックもニュートロックスサンも、飲み始め直後には全く効果がなく、フェーンブロック1000mgを毎日服用すると、飲み始めて1ヶ月以上でようやく効果が現れ、「SPFは1.2」。ニュートロックスサンに至っては250mgを85日間毎日飲み続けてやっと「SPF1.56」。
参考:飲む日焼け止めの効果とFDAからの警告|肌のクリニック高円寺 麹町
効果があると言えども、日焼け止めとしては実質的には効果がないと言っても過言ではありません。
ちなみに、高フラバノールチョコレート20g(フラバノール600mg以上含有)を12週間摂取した場合のSPFは2.05と報告されています。飲む日焼け止めよりも安いカカオチョコレートを食べるほうがマシでしょう。
参考:Eating chocolate can significantly protect the skin from UV light
日焼け止めというより、日焼けによる炎症や痒みを抑える効果は認められるそう。
そもそも飲む日焼け止めは景品表示法・薬機法(旧薬事法)違反!
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品が規制対象となる薬機法(旧薬事法)。本来健康食品は規制の対象外ですが、医薬品と同じような効果・効能をうたった場合、「無承認無許可医薬品」と見なされる可能性があります。
Q.1.「飲む日焼け止め」「紫外線カット」などとうたうサプリが売れているようですがこれは薬事法違反ではないでしょうか?
A.1. 薬事法違反です。
出典:薬事法ドットコム
本来「日焼け止め」という表現はきちんとした試験を行い、正しくSPFやPAの数値を獲得している塗る化粧品にのみ、許されています。
飲む日焼け止めに関しては、SPFやPAは測られていませんし、日本でも海外でもこれを認めた公的機関はないのです。また、サプリメントは薬ではないので、日焼け止めなどの効果を言ってはいけません。
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✔︎ UVクリームを超えた紫外線カット!
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など謳っているメーカーもありますが、科学的根拠は一切ありません。
それどころか薬機法違反であり、景品表示法においても合理的な根拠がない効果・効能の表示は「優良誤認表示」とみなされます。
飲む日焼け止めはFDAから警告を受けている
FDA(アメリカ食品医薬品局)は、飲む日焼け止めの紫外線防止効果は科学的根拠が乏しく、人々を危険に晒していると飲む日焼け止めを販売する4つの会社に対し、警告文を送りました。
飲む日焼け止めはアメリカ皮膚科学会からも警告あり
アメリカ皮膚科学会(AAD)は、「これらの飲む日焼け止めを、塗る日焼け止めや、日焼けから守る衣服の代わりとして使用しない」よう、消費者に警告しました。現在、飲む日焼け止め単独で、有害な紫外線から肌を適切に守るという科学的根拠は存在しません。
参考:The FDA Is Warning People to Steer Clear of Sunscreen Pills
飲む日焼け止めの安全性は?
飲む日焼け止めの有効成分がどのくらい胃から吸収され、どの程度効果が残り、また皮膚に広がって保護層を作れるのかといったことは、まだ分かっていません。
そして安全性についても不透明な部分が多いです。副作用については少ないようですが、飲む日焼け止めによる胃腸障害などは報告されています。
以下の方は特にご注意ください。
妊婦や授乳中の方の摂取はやめよう!
国産の飲む日焼け止めの主成分はニュートロックスサンであることがほとんどですが、ニュートロックスサンの原料ローズマリーには「子宮を刺激する作用」と「血圧を上げる作用」があるため、注意が必要です。
アレルギー反応が出る危険性あり
ニュートロックスサンは基本的には、継続して服用し続けてもアレルギーの原因にはなりにくいと言われていますが、フェーンブロックはシダ科の植物から抽出されているため、アレルギー反応を引き起こしてしまう危険性があります。
飲む日焼け止めを過信するあまり、皮膚がんになる可能性あり
飲む日焼け止めは紫外線を遮断できるものではありませんし、顔・首・耳・手の甲に毎朝日焼け止めを塗り、それを1日に何度も塗り直すのに勝るものはないのです。
日焼けを防ぎ、紫外線による皮膚の老化を減らし、皮膚がんのリスクから保護できるという誤った安心感をもってしまうことで、塗るタイプの日焼け止めを使用せず、結果皮膚がんになってしまう方も少なくありません。
参考:The FDA Is Warning Against Sun Protection Pills. Here’s Why.
さいごに
塗るタイプの日焼け止めの代わりになる錠剤やドリンクはありませんし、ましてや塗る日焼け止めを超えたなどということは絶対にありませんし、データも科学的根拠もありません。
ごく普通の皮膚科や美容業界で飲む日焼け止めを販売しているところもありますが、メーカーからの情報のみを鵜呑みにし、性質を理解せず、安全性の確認もせずに勧めるところもありますので、ご注意ください。
飲む日焼け止めは日焼けを防ぐというより、成分を見ると美白美容液や日焼けのダメージを回復させる抗酸化サプリという理解でいたほうが良いと思います。
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