「果汁100%ジュース」というと健康にも良さそうで、手軽にビタミンCなどの必要な栄養素が取れるイメージがありますよね。
果汁100%だから安心!と子どもに飲ませる方も多いと思います。でも、ちょっと待ってください。
果汁100%と謳っておきながら、実際は添加物まみれだったり、農薬まみれのものである可能性が高いのが現状です。そして、果汁100%ジュースでも健康被害が相次いでいます。
その普段良かれと思って飲んでいる果汁100%ジュースが、どういったものなのか、詳しく見ていきましょう。
もくじ
ストレート果汁とは?
果汁100%ジュースには2種類、”ストレート” と ”濃縮還元” があり、スーパーやコンビニ、市場に出回っているもののほとんどが、濃縮還元のものですが、「果汁100%ジュース」と聞くと、多くの方が想像する製法が、こちらの「ストレート果汁」です。
産地で採れた果実を濃縮せず、カットまたはぎゅっと絞ったあと、低温殺菌・冷凍加工されて工場へ向かい、容器に入れて作られます。果実をそのまま使うため、果実そのものの味・風味がするジュースです。
ストレート果汁は後に記載する濃縮還元より高価なものがほとんどですが、商品によっては香料が使われていたり加糖されていたり、腐敗しないように酸化防止剤(ビタミンC)が添加されているものもあります。
商品ラベルを見て確認しましょう。
濃縮還元とは?
原材料となる野菜・果実を搾汁した後、濃縮して水分を除き、保管した濃縮原料に再度、水分を加え、元の濃度に戻すことを「濃縮還元」と言います。
濃縮還元ジュースのほとんどは海外から輸入するため、輸送しやすいように果汁を絞って(水分を飛ばして)ドロドロにペーストする、もしくは固形にして1/5~1/6まで濃縮し、コンパクトに冷凍した状態で送られてきます。
水分を飛ばす方法は、加熱・真空・凍結・ろ過・超音波などがありますが、加熱は果汁の風味を損いやすいため、近年ではあまり行われていません。
日本に輸送したあと再び水分のほか、果糖ブドウ糖液糖など生成された異性化糖を添加したりして、元の濃度に戻します。
つまり、還元する時に元の果汁と同じ濃度になるように水分を加えることで、果汁100%ジュースと表記できるようになります。また、元の濃度より薄ければその濃度に合わせて「果実飲料」、「果汁入り清涼飲料水」、「清涼飲料水」と表記することになります。
濃縮還元に含まれる添加物は?
ジュースは季節に関係なく年中販売する必要があるため、長期間保存しておかなければなりません。そのため、無菌タンクに入れ、酸素を取り除き保管します。
ジュースから酸素を取り除くということは、ジュースの風味や香りを生む天然の化学物質も大量に取り除かれますが、そのまま単純に水分を入れ、還元しただけでは飲めたものではありません。
そのため、砂糖・果糖ブドウ糖液糖または蜂蜜、香料、未酸化炭素(炭酸ガス)、強化剤(ビタミン・ミネラル)、酸味料、保存料・安定剤、搾り立てに見せる濁り剤、酸化防止剤(ビタミンC)などさまざまな添加物が加えられます。
果汁100%なのにおかしいと思いますよね。
法律的には、ジュースによりますが、全体の5%以下または2.5%以下の砂糖なら、100%ジュースと表記してもいいということになっています。
また、化学的に合成された香料は3200種類以上あり、あらゆる香りを混ぜ合わせて元の果実の香りに近くなるよう作られますが、例えばいちごの香料は酪酸エチル、乳酸エチル、リナロール、アセトフェノン、アルデヒド、レモン精油など30種類以上もの香料が混ぜられています。
しかし、これだけたくさんの香料を使用しても、表示は「香料」と一括で記すだけなのです。中には人体に影響のある副作用を持つ香料も存在しますが、それでも表示は「香料」のみです。
ビタミンC(添加物)も一括表示OKですが、これはL-アスコルビン酸ナトリウムです。そのほとんどが中国産のものなので、日本の基準に合わせて作られているのかは疑問です。
これらの添加物を使用することで、年がら年中、旬に関係なくいつも同じ味の100%ジュースが楽しめます。
濃縮還元の果汁100%ジュースの農薬問題
濃縮された果汁は日本国内で戻せば(還元すれば)、国内製造品と表示してOKなのです。とはいえ、バレンシアオレンジやグレープフルーツはほぼ100%、りんごは86%など使用されている果汁のほとんどは外国産です。
外国産の果実は輸送距離が大きい分、防腐処理を目的に、栽培期間中だけでなく収穫後にも複数回農薬を使用されることが多いです。(ポストハーベスト農薬といいます。)
濃縮し還元することで、香りと栄養素は失われますが、農薬に関しては濃縮・乾燥粉末させても、成分が完全に消えることはありません。
濃縮還元の果汁100%ジュースに栄養はあるの?
果物に含まれていた食物繊維は搾汁でほぼ取り除かれ、ビタミンやミネラルは加熱処理される過程で壊れてしまいますが、食品添加物を入れることで、必要とする栄養面が補充されています。
ストレート果汁も減菌する過程で熱を加える必要があるため、栄養面では濃縮還元と大差がないと言われています。
ただ、健康面ではどうでしょうか。あらゆる添加物が含まれた濃縮還元か、必要最低限のストレート果汁か、どちらが身体にとっていいものかは一目瞭然だと思います。
果汁100%ジュースで増える健康被害
「果汁100%のフルーツジュースが身体に良い」という考え方は正しくありません。フルーツジュースと加工されていない生の果物では、健康に対する影響が全く異なることがわかっています。
がんの発症リスクがあがる
パリ第13大学のMathilde Touvier氏らが、2009~2018年までの9年にわたり、18歳以上のフランス人男女10万1,257人を対象に行った研究で、砂糖入り飲料(果汁100%ジュースも含む)とがんの発症リスクとの関連を調べました。
- 1日にコップ半分程度でも、毎日砂糖入り飲料を摂取すると、がん全体の発症リスクが18%増加する
- 砂糖入り飲料の摂取量が1日当たり100mL増えるごとにがん全体の発症リスクは18%上昇し、乳がんでは22%上昇
- 果汁100%ジュースも同様に、がんと有意な関連を示し、がん全体の発症リスクは12%上昇
出典:Sugary drink consumption and risk of cancer: results from NutriNet-Santé prospective cohort
死亡リスクがあがる
ハーバード大学の研究チーム甘い飲み物を摂取することと死亡リスクの関連性を1万3,440人の成人を対象に調査し、フルーツジュースの摂取と死亡リスクに関連があり、フルーツジュースを飲む人は、死亡リスクが24%上がると発表。
参考:Association of Sugary Beverage Consumption With Mortality Risk in US Adults
糖尿病リスクがあがる
フルーツジュースをよく飲む人では糖尿病の発症が増える傾向が示された。リンゴジュースを1日3杯以上飲む人では、1杯未満の人に比べ発症リスクは1.15倍に、グレープフルーツジュースでは1.14倍になった。オレンジジュースを1日1杯以上飲む人では、1杯未満の人に比べ発症リスクは1.24倍になった。
出典:Intake of Fruit, Vegetables, and Fruit Juices and Risk of Diabetes in Women
生の果物と果汁100%ジュースは全く違う!
果物自体が不健康というわけでは全くなく、むしろ果物は積極的にとった方がいいとされています。
2016年に発表された論文では、新鮮な果物を毎日生で食べる人はそうでない人と比べ、日頃の血圧・血糖が低く、心血管疾患(心筋梗塞など)による死亡率を40%減少させることがわかりました。
参考:Fresh fruit consumption and major cardiovascular disease in china, NEJM April, 2016.
果物の中でも特にブルーベリー、ぶどう、りんごは糖尿病リスクをさげてくれます。
また、フルーツジュースを飲む人ほど体重が増加している傾向があり、加工されていない生の果物を食べている人ほど体重は減少しているという研究結果もあります。
参考:Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men
その他、
- 冠状動脈性心臓病と脳卒中のリスクは約20%低くなる
- 乳がんを発症するリスクが25%低下。(思春期にりんご、ばなな、ぶどう、とうもろこし、成人初期にオレンジの摂取量を増やした女性では、乳がんが大幅に減少)
果物を日常的に摂取することで、身体にとってのメリットがたくさんあります。
たしかに果物にも果糖は含まれていますが、1個当たりの果糖含有量を見るとたいしたことはありません。たとえば、みかん1個を搾ったところでせいぜい果汁は数十ml程度です。果物から200mlの果汁を取ろうと思ったら、食べきるのが大変な量になってしまいます。また、果物にはビタミンやミネラル、食物繊維など、さまざまな栄養がバランスよく含まれています。ですから、デザートに果物を食べることは理にかなっているのです。
出典:一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会理事長 医学博士 永田孝行先生より
さいごに
果汁100%を謳っていても、実際には色々添加されている可能性があったり、身体にとっては思わしくないことがわかりましたね。
果汁100%ジュースに限らず、「〇〇が身体に良い」という情報は、商品の売り上げに大きな影響を与えます。その際科学的根拠のない健康情報がマーケティングの一環として利用されてしまっている可能性もあることを、わたしたちは知っておく必要があります。
また、小さな子どもに砂糖入りのジュースをわざわざあげる必要はありません。砂糖における中毒性は薬物にとても似ていて、コカインの8倍とまで言われています。子どもでも気軽に買うことができる、まさに合法ドラッグ。
水やノンカフェインのお茶で十分です。ジュースをあげたいなら、果物を自分で絞り、自家製のフルーツジュースをあげましょう。有機栽培や無農薬が安心です。
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